借用書とは?作っておくべき理由と具体的な作成方法
更新日:
公開日:2019.12.13
「借用書が必要!どういった情報を盛り込んで書けばいいのかが知りたい」
金銭や物品の貸し借りの際に交わされる書面の一つに、借用書があります。
借用書とは、双方でお金や物の貸し借りがあったことを証明する書類のことです。貸し借りで何らかのトラブルがあったとき、借用書の有無でその後の展開が大きく変わることもあります。
この記事では、借用書の重要性と作っておくべき理由をご紹介するとともに、借用書を初めて作る人でも簡単に作成できる「ですます調」書式のテンプレートもご用意しました。
フォーマットをリンク先からダウンロードした上で、作成例として利用してください。
この記事はこんな人にオススメ!
- 借用書の書き方を知りたい人
- 個人間でお金を貸す予定がある人
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少額でもお金の貸し借りをするなら借用書を作るべき!
借用書とは「お金の貸し借りを、公に証明するための書類」です。
借用書を事前に作っておくことで、「誰が・誰から・いくら借り・いつまでに返すのか」といった、借金の当事者間でしか知り得ない情報を形として残せます。
住宅や自動車といった金額が大きな買い物をしたり、保険に加入したりした際には、必ず契約書を交わします。
契約書がお金や物品のやり取りを形に表した書類であるのと同様に、借用書はお金の貸し借りをした事実と、その詳細を記録として残しておくための書類と思ってください。
特に、個人間でのさまざまな取り引きのうち、お金が関わる取り引きほど以後のトラブルが頻発しがちです。
こうしたトラブルの発生を未然に防ぎ、起こったトラブルを迅速に解決する手段としても、借用書は重要な働きを担ってくれる心強い味方ともいえるでしょう。
このため金額の大小に関係なく、個人間でお金の貸し借りを行うのであれば、借用書は必ず作っておくべきです!
借用書の作成は必須ではない
借用書が持つもう一つの重要な働きといえるのが、「契約を公に証明する」点です。
しかし借用書がなくても、そのお金の貸し借りは「契約」したことになります。口約束でのお金の貸し借りであっても、それ自体が契約として成立することが法律で認められているのです。
そのため、借用書がないことを理由にお金を貸す約束を守らなかったり、借金の返済を拒否したりといった行動は、法的にも決して認められません。必ず履行する義務があります。
そうすると、多くの人が思いがちなのが「では、借用書をわざわざ作る必要はないのでは?」という点でしょう。
借用書が持つ意義は、契約の証明のみならず「トラブルを防ぐ手段」や「トラブルが起きた際に第三者にも把握できる証拠」としてなど、豊富にあります。
したがって、必須ではありませんがあるに越したことはありません。
借用書はトラブルを未然に防ぐために必要
お金の貸し借りにまつわるトラブルの中で特に多いのが、「貸したお金を返してもらえない」というものです。
借主側が「借金など、そもそもしていない!」「確かにお金は受け取ったが、これは借金ではなく贈与だった!」と声高に主張するかもしれません。
貸主側が借金の額を自分に有利なようにごまかしたり、返済期日を偽ったりするケースも見られます。
これらはどれも、証拠がなければ証明することがとても難しいものばかりです。借金の当事者間ではさまざまな主張の隔たりがトラブルとして起きやすく、解決を図るために面倒な裁判に持ち込む必要があるほど。
裁判に持ち込んだからといって必ずしも主張が認められるわけでもなく、裁判のような場面ほど、第三者が把握できるような客観的な証拠が重視されるのです。
事前に双方の主張や契約内容を明記した借用書を作っておけば、トラブルが発生する可能性を減らすとともに、トラブルの適切な解決にも役立つでしょう。
親しき仲だからこそ借用書を作るべき
お金の貸し借りにまつわるトラブルは、良好な人間関係さえいとも簡単に破綻させてしまうほどの怖さをはらんでいます。
家族や親族、親友といった今後も関係を続ける必要がある間柄だからこそ、お金の貸し借りをしなくてはいけないのであれば、トラブルを防ぐためにも借用者は書いておくべきです。
トラブルはどちらか一方の悪意が前提で起こるわけではなく、お互いのちょっとした認識のズレから起こることもあります。
例えば、以下のような認識のズレが発生したとします。

上図のように、お互いの認識のズレから借金トラブルが発生しかねません。あるいは「できるだけ早く」という文言が、貸主にとっては1ヶ月以内という認識であるのに対し、借主にとっては半年以内や1年以内という認識かもしれません。
この認識の違いも、トラブルを招く大きな要因になる可能性を秘めています。
このようにたとえ故意ではなかったとしても、トラブルに発展してしまう可能性があります。
こうした認識のズレを防ぎ、親しい相手との関係を良い状態に保つためにも、借用書には必ずお互いの意見をすり合わせた上で設けた契約内容を記載するのが望ましい形です。
家族間なら贈与と疑われるのを防止する意味もある
家族間でお金の貸し借りを行う場合、金額によっては税務署から「貸し借りではなく、贈与行為なのでは?」と疑われる可能性があります。
借金であれば税金は発生しませんが、贈与と見なされると贈与税の対象となり、税金を納める必要が出てくるのです。
このため、借金か贈与かは予想外に大きな問題といっても過言ではなく、これを証明する方法として借用書が有効です。
借用書を作った上でやり取りすることで、税務署に対して「これは借金である」と客観的に示すことができます。
大切なのは客観的な証拠を残しておくこと
借用書を作るのが面倒だという場合は、借用書ではない第三者でも客観的に把握できる証拠を残しておきましょう。
例えば、手渡しではなく銀行口座を通じてお金を振り込めば、振り込みした事実が記録として残せます。
あるいは、貸し借りにまつわる交渉や話し合いをメールや音声データとして残しておく方法も、万が一の際の証拠として有効です。
ポイントを押さえれば簡単!借用書の具体的な作り方
借用書をいざ作ろうと思っても、初めてで何を書けばいいのか分からない人も多いはず。借用書の作成自体は、要点を押さえておけば特に難しいものではありません。
ここでは借用書の書き方と、書く際に覚えておきたいポイントについて見ていきましょう。
借用書に決まった形式はない
借用書と聞くと、中には「甲は、乙に対して○○の義務を負い……」という、ちょっと堅苦しい形式張った書面を想像する人もいるかもしれません。
しかし、借用書自体に特に決まった形式はありません。例えば「甲は、乙に対して」を、「貸主○○は、借主××に△△円を貸します」といった「ですます調」で書いても、借用書としての効力は発揮されます。
「毎月この日にお会いした上でおしゃべりしましょう」というように、直接お金のやり取りに関係することでなかったとしても当事者間の決まりごとを書いておくと、それも証拠として活用できると覚えておきましょう。
使用する用紙などについても特に決まりはないので、メモ用紙やチラシの裏に手書きされたものであったとしても、内容に不備がなければ効力を発揮します。
ただし、借用書を書く際には、必ずボールペンや万年筆など消せないインクを使った文具で書いてください。鉛筆やシャープペンシル、消えるタイプのボールペンを使うと、ねつ造や改ざんされる恐れがあります。
効力がある借用書として、必要事項をそのまま記入するだけで使える「ですます調」のフォーマットを用意しました(内容については、以下スクリーンショットを参考)。
※Microsoft Word形式(.docx)です。表示には対応ソフトが必要となるため注意してください。
記載するべきポイントは9つ
借用書を書く際には、最低限記載しておく必要がある項目が全部で9つあり、その内容は以下の通りです。
- タイトル(「借用書」あるいは「金銭消費賃借契約書」のどちらか)
- お金の貸し借りがあった事実・貸し借りした金額
- 返済日
- 返済方法
- 利息
- 遅延損害金
- 禁止事項
- 当事者の署名・捺印
- 収入印紙
1. タイトル
通常、借用書のタイトルには、「借用書」もしくは「金銭消費賃貸契約書」のどちらかを記載します。違いは、下記の項目以外は特に変わりありません。
借用書 | 借主が作って貸主に保管させる書類 |
---|---|
金銭消費賃貸契約書 | 2通作った上で貸主・借主の双方がそれぞれ保管する書類 |
2. 貸し借りがあった事実・金額
「〇月〇日に○○円を貸した(借りた)」というように、お金の貸し借りにまつわる事実を省略せず正確に記載しましょう。
「わざわざ書面にする必要はないのでは?」と思う人もいるでしょう。ところが、お金の貸し借りがあった事実を金額とともに明記しておかないと、いざトラブルが起こった際の証拠として認められないのです。
金額など数字を記入する際には、必ず以下の3つの点に注意してください。守らなければ、改ざんや偽造が行われる可能性が出てきます。
- アラビア数字ではなく、大字漢数字を使うこと(×:100万円 〇:壱百萬円)
- 頭に「金」、末尾に「円」を必ず付けること(「金一百萬円」など)
- 空白を空けず、詰めて記入すること(×:一 百 萬 円 〇:壱百萬円)
3. 返済日
いつまでにお金を返済するのか、期日を双方で取り決めた上で明記しておきましょう。
「お金に余裕ができたら」や「大体○年くらいまでに」といった曖昧な表現による記述だと、貸主と借主との間で解釈が異なったり認識がずれたりする可能性があり、トラブルの発端となりかねません。
もし借主に余裕がないなどで、返済期日がはっきりと決められないようであれば、
「〇年〇月〇日を返済期日とする(ただし、双方の合意があれば返済期日を変更できるものとする)」
というように、返済期日を変更できる旨の文言を入れておくと、臨機応変な対応が行えます。
4. 返済方法
銀行振込で行うのか手渡しで行うのか、あるいは現金書留で郵送するのかなど、返済方法についてもしっかりと決めた上で明記します。
「貸主の住所まで返済金を持参する」「毎月末日までに○○町の指定のカフェまで返済金を持参する」というように、返済場所も合わせて決めておくとよいでしょう。
5. 利息
利息を付けた上で返済するのであれば利子は何%にするのか明記し、無利息ならその旨を明記してください。
ただし、借金に関する利息のルールを定めた「利息制限法」の上限を超えた数値を設定することはできず、超えた場合は無効と見なされます。
例えば「利息は年300%とする」という借用書を作った上で双方が署名捺印していても、上限を超えた分の利息は無効です。
借用書内で利息について取り決めていなかった状況で利息を請求する場合は、年5%を上限に請求が認められます。
6. 遅延損害金
遅延損害金とは、返済期日までに支払いが遅れた場合に発生するペナルティーのことです。
遅延損害金は、最大で利息の1.46倍までと定められており、これを超える額は無効となる点に注意してください。
7. 禁止事項
お金の貸し借りは、貸主・借主の双方の信頼の上で初めて成り立つ行為です。
信頼関係が崩れてしまった場合に備え、未返済分の扱いについて借用書であらかじめ定めておくことをおすすめします。「残金は一括返済する(期限の利益の喪失)」といった形で決めておくべきです。
「返済が一度でも遅れたら」や「ギャンブルに手を出したら」など、返済に悪影響を及ぼす要因を禁止事項として盛り込んでおくと、これらに起因するトラブルを未然に防げます。
8. 当事者の署名・捺印
貸主・借主双方の合意の元で交わされた契約であることを証明するため、両者が直筆で住所・氏名を記入した上で捺印を行いましょう。
このとき記入した文字が消えないよう、鉛筆や消せるタイプのボールペンの使用は避けてください。
9. 収入印紙
印紙税法により、一定金額以上のお金を貸し借りする場合には、借用書に収入印紙を貼付することが義務付けられています。
貸し借りする金額に応じて貼付する印紙の額も異なるので、事前に必要な税額を確認しておきましょう。
万が一貼り忘れても、借用書としての効力がなくなるわけではありませんが、ペナルティーとして本来の印紙税の3倍に相当する額が徴収される点に注意してください。
公序良俗に反した内容はNG
以下のように犯罪を示唆・教唆するような非常識な内容は、公序良俗に反するとして認められません。
- 返済が滞った場合、貸主から借主に対して暴行を加える
- 返済できなくなった段階で、借主はお金を盗んででも返済すること
こういった公序良俗に反するような文言を盛り込んだ借用書を作っても、証拠としての効力が認められないため、注意してください。
まとめ|借用書とはトラブルなくお金を貸し借りするために必須の書類
家族や友人など、たとえ親しい間柄であったとしても、お金の貸し借りをきっかけにその関係が破綻するケースは決して少なくありません。
こうした悪影響を未然に防ぐため、今回は借用書の有効性と書き方について詳しく解説しました。
借用書をこれから書く方は、注意点を踏まえた上で必要事項をしっかりと記載し有効な書面を作りましょう。
借用書の書き方・書式が分からない人や面倒な人は、記事内でご紹介した「ですます調」のテンプレートをリンク先からダウンロードして、利用してください。
氏名や住所、金額など必要事項を記入するだけで、簡単に有効な借用書を作ることができます。
借用書の効力を理解し、トラブルのないお金の貸し借りを目指しましょう!
※記載されている内容は2023年2月現在のものです。