損害賠償が払えないときの解決法|知っておきたい「免責」について
更新日:
公開日:2019.9.26
「損害賠償を請求されても金額が高すぎて払えない。どうすれば解決できるの?」
交通事故や離婚といった不法行為をはじめ、借り入れの長期滞納といった債務不履行によっても請求される可能性がある損害賠償は、懲罰的な意味合いから請求額も高額です。
どうしても払えない場合、どういった方法を探るべきなのでしょうか。
損害賠償による負担を減らし、今の苦しい状況を解決できる方法を解説していきます。
この記事はこんな人にオススメ!
- 損害賠償を請求されたが払えない人
- 損害賠償と免責について詳しく知りたい人
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いつ発生してもおかしくない!払えないほど高額な損害賠償
そもそも「損害賠償」とは読んで字のごとく、何らかの損害を与えた加害者や過失を持つ側が損害を受けた側に対し損害分を金銭で補償する行為と、それを規定した制度のことです。
損害賠償は故意か不注意かを問わず、損害が認められた段階で全て補償の対象になります。
一例として以下のようなケースが当てはまります。
- 車道の走行が義務づけられているにもかかわらず歩道を自転車で通行中、同じく歩道を歩いていた歩行者にぶつかりけがを負わせてしまった(故意による損害賠償の対象)
- 法定速度内で走行中、交通事故の処理に気を取られ前方の車に衝突した結果、相手の車を壊してしまった (不注意による損害賠償の対象)
このように、損害賠償は特定の事例に限って適用される制度ではなく、交通事故や火事などその理由は多岐にわたります。つまり、いつどこで誰が損害賠償の当事者になるかは分からず、全ての人に起こり得る可能性があるのです。
交通事故
損害賠償が発生する最も多い事例の一つが、交通事故です。
交通事故の加害者になった場合、事故を通じて被害者に与えたけがの治療費だけでなく、車など壊れた物の修繕費など具体的な損害額がそのまま損害賠償として請求されます。
また、交通事故の損害賠償が高額になりやすい要因として、被害者が死亡するケースや後遺障害を負うケースが多いという点も無視できません。
被害者に対し完治できない後遺障害を負わせたり死亡させたりすると、被害者の年齢や職業によっては数億円単位の賠償を請求される可能性があります。
こうなると、強制加入が前提の自賠責保険だけでは全てを補うことができず、残額を全て自己負担しなくてはいけません。
一方、事故率の高さなどから、自動車が絡む交通事故に関連した損害賠償を手助けする制度が充実しています。中でも、任意保険(自動車保険)は自賠責保険だけでは補えない部分をカバーする役割を担ってくれます。 自動車を運転する機会がある人ほど、万が一の備えとして必ず加入しておくべきです。
婚約破棄・離婚
正当な理由が認められない離婚や婚約破棄に対して、損害賠償が請求されることがあります。
例えば、不倫など不貞行為をしたり相手の同意なく一方的に婚約を破棄したりすると、精神的な被害を受けた側から「慰謝料」の名目で損害賠償が請求されます。
この慰謝料はあくまでも損害賠償の一部であり、同列のものではない点に注意してください。
名誉毀損
他人を中傷したり言葉を使って傷つけたり、あるいは不名誉となる情報を公表し相手の名誉を傷つけた場合、刑法第20条の名誉毀損罪に該当し損害賠償の対象になります。
ちなみに、名誉毀損は中傷の真偽については問わず、その中傷が真実であったとしても違反となるため注意しましょう。
参考元:Wikipedia|名誉毀損
火事
失火者の責任について規定した「失火責任法」では「過失により火事を起こして他者に損害を与えた場合、重大な過失があると認められない限り賠償責任は発生しない」と定められています。
この場合の「重大な過失」の例としては
- 台所で揚げ物の調理中に来客があり火をつけたまま離席した
- 吸っていたタバコの火を完全に消さないままゴミ袋に捨てて外出した
いずれも、正しく処理していれば防げた出火であり、これらの行為が特に重い過失と見なされ損害賠償の対象です。
損害賠償が免除されることはあるのか?
故意や不注意といった理由から発生する損害賠償には、基本的には免除という制度は規定されていません。
そのため、例えば経済的な理由で賠償を払うことができなくても支払い義務は免除されず、払い続ける必要があります。
ただし、支払いを免れる例外として「自己破産」という方法があります。
自己破産した場合は免除される可能性がある
抱える負債の返済が困難と判断された場合に適応される自己破産は、損害賠償も対象です。認められることで免除される可能性があり、これを「免責」といいます。
ただし、全ての損害賠償が対象になるわけではありません。あくまでも一部の損害賠償だけであり、自己破産したからといって必ずしも賠償が免責されるわけではない点に注意してください。
自己破産でも免除されない「非免責債権」
自己破産しても免責が認められない損害賠償は、次に該当するものです。
- 悪意を持って加えた不法行為による損害への賠償
- 故意または重過失により身体・生命を害する不法行為による損害への賠償
このような事例に該当する損害賠償は「非免責債権」とみなされます。
例えば他人から物を盗んだり横領したりした場合、これらの行為はいずれも「悪意で(損害を与えるつもりで)」「故意に(自らの意思で)」行われていることから、免責の対象外です。
また、他人に対し自ら暴行を加えてけがを負わせた場合も「故意に身体を害する」不法行為と認められ、こちらも免責の対象外とみなされます。
免責されるかどうかは民事裁判で決まる
明確な非免責債権と認められる場合を除き、基本的には自己破産を申請した段階で民事裁判が行われます。この裁判の場で、対象の損害賠償が免責されるかどうかが決定します。
そのため、必ずしも「このケースは免責される・されない」と断言はできません。その上で「損害を与えた側に著しい落ち度がある場合は免責されない」と覚えておくことで、一定の判断が自分で下せます。
損害賠償が高額で払えないときは
損害賠償の額は、相手が被った被害や加害者側の過失度合いなどに応じて変化し、時には数億円単位の巨額が請求されることもあります。
こうなると個人では到底支払うことができず、たちまちのうちにピンチに陥ってしまいます。
こういった状況で実践したい解決法を見ていきましょう。
専門家に相談しよう
請求された損害賠償が払えないときは、無視するのではなく必ず弁護士などの専門家に相談してください。
素人判断では、請求された損害賠償は本当に妥当なのか、適正な金額かどうか判断できません。
弁護士は、こうした要素を全て法律的な見地に基づき判断し、的確なアドバイスや指示を提案してくれます。その後の対応も柔軟に行えますし、個人ではどうしても難しい交渉を一任することで、経済的に余裕がなければ分割払いや猶予を認めるよう相手側に働きかけてもらうこともできます。
また、自動車保険や損害保険に加入している人は、契約内容によっては保険が適用される可能性があります。 この場合は適用されるかどうかの確認を含め、まずは契約中の保険会社に相談してください。保険が使えるなら、今の苦しい状況を一気に解決できるでしょう。
被害者と話し合おう
損害賠償は、その額だけでなく支払い方法も全て被害者側に一任されています。
そのため、交渉次第では減額や一括払いではなく、分割払いを認めてもらうこともできます。
どうしても一度に支払えないのであれば、一度被害者側に支払いの猶予や分割払いを認めてもらうよう交渉してみるのも一つの手です。被害者も「損害賠償を請求する=できるだけ支払ってもらいたい」という気持ちから、一括払いが難しい人に分割払いを認めてくれる可能性があります。
ただし、交渉を持ちかけても必ず対応してもらえるとは限らず、こちらの要望を飲んでもらえる保証ももちろんありません。 あくまでも交渉の選択権は全て被害者に委ねられており、説得できるかどうかがカギになります。交渉が苦手な人は、プロである弁護士の同伴や委任も検討してください。
強制執行になっても必要最低限の財産は保証される
損害賠償の請求を無視し続けると、最終的には裁判を通じて「差し押さえ」や「強制執行」といった処分が実行に移され、財産や資産を没収されることになります。
ただ、強制執行処分が下されたとしても、生きていくために必要な最低限の財産までは没収されず残してもらえます。それでも住宅や自動車といった資産は、生活にただちに必要な最低限の物とは見なされず没収される可能性が高いものです。
「手放したくない」という思いから無視したくなるかもしれませんが、その後のリスクの大きさを考えると絶対に無視してはいけません。
まとめ|損害賠償が払えない時はすぐに専門家に相談しよう
今回は、請求された損害賠償がどうしても払えないとき、それを放置するリスクや解決方法について詳しくお伝えしました。
損害賠償を請求されたということは、ご自身の行動が他人に損害を与えてしまった事実を意味しています。それでも、生活に破綻を来してまで無理をする必要はありません。
自己破産も一つの手であり損害賠償が免責される可能性はありますが、必ずしも全ての損害賠償が対象にはならない点に注意してください。
その場合は、被害者に対し誠意を持って減額や支払いの猶予の交渉を持ちかけるか、どうしても納得できないようであれば弁護士へ相談した上で、しかるべき手段を検討するべきです。
普通に生活していればあまり身近ではないからこそ、いざ自分がその対象になった際にパニックにならないよう、損害賠償について改めて知識を蓄えておくとよいかもしれません。その上で、今回ご紹介した情報が参考になれば幸いです。
※記載されている内容は2024年9月現在のものです。