借りた奨学金の踏み倒しはできる?注意点とリスク
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返済不要の給付奨学金を除いた全ての奨学金は、卒業後に返済の義務が発生する借金の一種です。滞りなく毎月の返済を実行できるなら、何ら問題はありません。
しかしさまざまな理由からそれが滞ってしまった結果、借りた奨学金を返せない人が今、急増しています。
「いっそのこと、奨学金の返済自体を踏み倒してしまいたい」、このように考える人もいるのではないでしょうか。
奨学金の踏み倒しという行為にはリスクも多く、なかには「知らなかった」では済まされない重大なものもあります。将来の人生に悪影響となる要素が多過ぎるため、現実的な選択とは言えないのが実情です。
そこで今回は、借りた奨学金の踏み倒しができるのか?ということと、その実践方法として法を犯さずに行える3つの選択肢を紹介します。注意点やリスクもあわせて紹介するので、今後のためにも知識を得ておきましょう。
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奨学金の踏み倒しは本当にできる?できない?
奨学金の返済が立ち行かなくなっている人にとっては、直近の滞納さえ頭を抱えてしまうほどの難しい問題です。そんな時、「奨学金が踏み倒せる」といった声を目にすれば、思わずすがりたくなるかもしれません。
では、奨学金の踏み倒しは本当にできるのでしょうか?それともできないのでしょうか?まずは基本として、踏み倒しの可否とその特徴から確認していきましょう。
制度上、奨学金の踏み倒しは可能
現在提供されている奨学金制度の特徴から見ると、返済に応じない踏み倒し行為は可能です。ここで紹介するその方法には、3種類の選択肢があります。どれも違法な行為ではないので、実行したからといって逮捕される心配は全くの無用です。
ただし、返さなくてはいけない借金を踏み倒す行為自体は、本来であれば非常識な行為。そのため、違法ではないからといって誰にでも奨められるものではなく、そこに多くのリスクが存在していることを無視できません。
全ての方法にはリスクがある
踏み倒しは、貸したお金を返してもらう権利を持つ貸主の利益を一方的に害する行為です。そのため借主による乱用を防ぐべく、踏み倒し自体にさまざまなリスクが課せられています。
ここからも踏み倒しという行為が、先の見通しが全く立たない窮地に立たされた人の最終手段であることは明らかです。
考えられるリスクは、踏み倒す方法によって内容に違いがあります。ただしどの方法にも必ずリスクは存在するので、負担なしで借金を踏み倒せると考えないようにしてください。
特に法律によって規定されているリスクは、将来設計にも大きく影響するものばかりです。場合によっては「多少無理をしてでも返済を続けるべきだった」と感じる人もいるでしょう。
「借金を返さなくてもいいのなら」といった安易な気持ちから踏み倒しするのではなく、必ずリスクの内容を全て確認してから実行するか判断するのが肝心です。
合法的に奨学金を踏み倒せるのか
借金を踏み倒すというと、法律に違反するような行為を連想する人も多いのではないでしょうか。そういった非合法な手段を使って踏み倒しを実行する人もゼロではありません。
しかし、なにも法律に違反してまで踏み倒さなくても、法律を守ったまま踏み倒す方法もちゃんと存在します。法律に違反しない、つまり合法的に奨学金を踏み倒すことができれば、少なくとも罪に問われる心配は全くありません。
奨学金を踏み倒す3つの方法
ここではその方法として、3つの選択肢を挙げながら詳しくご紹介します。それぞれの方法で、適用条件や踏み倒しの達成期間などさまざまな部分が違う点に注意してください。
各方法の詳細や特長・注意点を確認しつつ、どの方法が自分にとってベストなのかを判断していきましょう。
自己破産による踏み倒し
合法的な奨学金返済の踏み倒しとして真っ先に挙がるのが、自己破産を使った方法です。自己破産とは、個人の借金問題を解決する債務整理という法的手続きの一つ。この方法を使うことで、破産状態であることが法的に認められます。
そうすることで、それまでに抱えている全ての借金の返済義務が帳消し(免責)となるわけです。これは法律に基づき裁判所が行う決定であり、一度認められれば覆ることはありません。
大学などへの進学費用として借りた奨学金も、自己破産による免責の対象です。免責が認められることで、元本と利息(すでに滞納している場合は遅延損害金も含む)全額の返済義務がなくなります。
法律と裁判所によって下される判断なので、最も安心かつ確実な踏み倒しの方法ともいえるでしょう。
自己破産で注意すべき点
「自己破産による踏み倒し」という方法を選ぶ際に注意しておきたいのが、以下の2点です。
- 契約時に設定した連帯保証人ならびに保証人の返済義務までは免責されない
- 免責が認められなかった借金の返済義務は残る
自己破産にまつわる奨学金特有の問題としてまず注意しておきたいのが、連帯保証人と保証人の返済義務です。手数料の節約を目的に機関保証ではなく人的保証を選んだ人は、契約時に親と親族をそれぞれ保証人として立てなくてはいけません。
自己破産によって認められる借金の免責は、自己破産を申し出た契約者本人のものだけです。つまり「奨学金の免責≠契約者と全ての保証人が対象」となる点に注意してください。
自己破産による免責で契約者本人の返済義務がなくなると、今度は連帯保証人に、さらには保証人へと請求が移ります。
各保証人が返せない場合は、保証人が自己破産手続きを各人で行う必要があるため、自己破産によって身近な親族に迷惑がかかるわけです。
自己破産による踏み倒しをするのであれば、保証人に以降かかる負担について必ず了承を得るべきでしょう。了承を得ずに独断で踏み倒すと、それが原因で親族とのトラブルに発展する恐れも十分に考えられます。
免責不許可事由とは
自己破産による借金の帳消しはあくまでも、免責が認められた借金のみです。つまり、免責が認められなかった借金の返済義務は引き続き残り、以降も返済しなくてはいけません。
これを免責不許可事由といい、主に以下のような名目での借金・事由に対して適用されやすい判断です。
- 無駄遣い(浪費)と認められる借金
- 闇金など違法な業者から借りた借金
- 換金行為と認められた分の借金(クレジットカードのショッピング枠の現金化など)
- ギャンブルや投機目的での借金
- 申し立てより1年前までに、虚偽の情報を使って借金やクレジットカードを利用した
- 申し立て前に財産や資産を贈与または隠した場合
- 裁判所による調査に協力しなかった(調査拒否、虚偽説明など)
参考元:免責不許可事由|大阪地方裁判所
自己破産を申し立てた際には、その人の経済状況などが事細かに調べられます。お金の流れなども専門的な知識と権限の元で全て詳細にチェックされるため、上記のような履歴もバレやすいのが実情です。
バレやすいだけでなく、全ての借金の免責が不許可になるなどペナルティも大きいため、うそをついたり隠したりする行為は絶対にやめましょう。
奨学金の返済とは別にこういった目的での借金も抱えている人は、自己破産が認められても踏み倒しできない点に注意してください。
借金の時効成立を狙った踏み倒し
借金の契約には時効の概念が存在します。時効とは、あらかじめ決められた期間が経過した段階で、その義務が消滅する制度のことです。
奨学金も借金の一種であり、お金を借りる際に運営元との間で契約を交わしています。したがって、奨学金にも時効があり、その時効が成立することでも合法的に返済の踏み倒しができるわけです。
時効のカウントは最後に行った返済日で、奨学金の場合の時効は10年と規定されています。つまり、最後の返済日から10年が経過した段階で、自動的に借り入れの契約が無効となり、以降は返済義務を負いません。
時効は民法によって規定されている契約制度の一つです。このことから時効は、合法的に借金の契約自体を無効にできる制度ともいえます。
自己破産と比べると、時効は契約自体が法律によって強制的に無効化されるので、成立以降に背負うリスクが少ない点がメリットです。
ただし成立までに10年という膨大な時間が必要であり、その間には頻繁な督促などが行われるでしょう。そのため、そういった状況に耐えるべく強靱(きょうじん)な精神力や忍耐力が求められるのは必至です。
その上、時効を狙った踏み倒しを検討するなら、もう1つ注意しておきたいポイントがあります。それが、奨学金における「時効の起算点」にまつわる問題です。
奨学金における時効の起算点に注意
奨学金の返済に時効の成立を狙うのであれば、必ず注意しておきたいのが時効の起算点の問題です。起算点とはカウントがスタートする時点のことで、この場合は10年の時効を数える上での最初の日を指します。
本来であれば奨学金問題における時効の起算点は、返済を行った最後の日時が対象です。ところが大半の奨学金制度には、一般的な借金で存在する「期限の利益喪失」という特約が存在しません。
利益喪失とは、返済を滞納した場合に貸主が借主に借金全額を一括請求できる権利とその日時のことです。期限の利益喪失が認められていない奨学金では、毎回(毎月)の返済ごとに個別で時効が設定されます。
つまり、時効が認められるのは10年が経過した月までの返済分のみです。10年が経過していない返済日以降の分は引き続き返済義務が残るため、その分の督促は以降も行われます。
時効を狙った踏み倒しを考えるのなら、最終返済回(月)の日時から数えて10年が経過するまで油断できないことを覚えておいてください。
また日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の場合、時効が成立していない分だけでなく成立した分の遅延損害金も合わせて請求してくるのが通例です。
この場合、時効が成立している分については「消滅時効の援用(※)」を申し出て、支払い義務の免除を主張してください。
(※)消滅時効の援用:時効が成立した債務に対する債権者の利益が消滅した事実を法的に主張すること
たとえ権利が成立していたとしても、援用の主張しない限り請求された分の支払い義務が残るため、くれぐれも注意しましょう。
返還免除の適用による踏み倒し
日本学生支援機構の奨学金には、一定条件を満たすことで以降の返還が全額もしくは一部が減額される特例制度が設けられています。この制度のことを返還免除といい、うまく適用されればリスクなしで踏み倒しが可能です。
返還免除にはさまざまな条件が設けられているほか、大きく分けて以下の2つのタイミングで適用される時期が違っています。
- 進学後に返還が免除される
- 卒業後に返還が免除される
進学後に踏み倒せる方法
このうち、進学後に返還免除される制度のことを「業績優秀者返還免除候補者」といい、成績が優秀と認められれば在学中から免除が受けられます。この制度による免除を受けるためには、大学院に進学することが前提条件の一つです。
また大学を通じて申請を行った上で認定委員会による許可を受ける必要があるため、道のりは決して簡単ではありません。業績優秀と認められる主なケースとして、以下のようなものが例示されています。
- 学問分野において目覚ましい業績と認定できる実績(研究開発や各種論文、発明など)
- 文化または芸術分野における実績(著書や著作物の制作、受賞など)
- スポーツにおける実績(競技会での受賞など)
- ボランティア活動における実績(活動の社会的評価や受賞など)
これとは別に、同じく大学院に進学した学生を対象にした「返還免除内定制度」も、踏み倒し方法の一つです。
こちらは博士(後期)課程か博士医・歯・薬・獣医学課程に在籍中の大学院生を対象に、以下の条件を満たすことで返還免除される制度です。
- 博士課程の入試結果が良好であること
- 在籍中の修士課程の研究科長からの推薦
- 在籍中の修士課程の成績
申請し認定された段階ではあくまでも内定者であり、認定後すぐに免除されるわけではありません。大学院を卒業後に改めて免除申請を行うことで正式に免除が認定され、卒業後の返還がなくなります。利用時にはくれぐれも注意してください。
卒業後に踏み倒せる方法
大学などを卒業した後に申請することで、踏み倒しができる方法もあります。ただし条件を満たせれば全ての利用者にチャンスがある進学後の踏み倒し方法とは違い、卒業後に踏み倒せる方法は利用者が限られる点に注意してください。
というのも、卒業後に踏み倒せる方法は、主に以下の2つの条件のうちどちらかに該当している場合に限り適用されるからです。
- 奨学金の受給者本人が死亡した場合
- 精神または体に重い障害を負い、それが原因で返済できない場合
どちらも心身や生命に著しいリスクを背負った場合にのみ適用される条件であり、狙って利用できるものではありません。やむなく上記のどちらかの条件に適合している場合は、比較的簡単な審査だけで奨学金の返済が免除されます。
ただしどちらの場合も、制度の適用には返済義務を負う人(本人や連帯保証人など)からの申請が必須条件です。
本人が死亡した場合に行われる免除は、あくまでも奨学金の利用者本人のみで、連帯保証人・保証人への返済義務が引き継がれます。
この場合は連帯保証人や保証人の人自身が、返済できない旨を記した返還免除願を死亡証明書と一緒に提出することで免除される場合があります。
この条件に該当する人は、放置せず必ず申請して免除の認定を受けるようにしてください。
奨学金の踏み倒しによるリスク
奨学金を踏み倒すという行動には、さまざまな部分でリスクが存在していることを無視できません。なかには、リスクを背負ってからでは気付くのが遅過ぎるほど、軽くはないものもあります。
卒業後の人生や生活に大きく影響するものもあるため、「知らなかった」では済まされません。
そこでここでは、踏み倒しを検討している人に向け、その決断によって考えられるリスクについて詳しく紹介していきます。これらの内容をしっかり吟味した上、本当に踏み倒しを実行するかを決めても遅くはありません。
度重なる督促
踏み倒しの実践によって最も初めに訪れるリスクとなるのが、返済を求める督促の連絡です。督促の連絡は、主に書面の郵送と申込時に申請した電話番号への電話連絡が一般的で、タイミングや時間を問わず行われます。
どの時期から督促が行われるのか、明確な規定は一切公表されていません。しかしさまざまな意見を集約すると、最初の滞納後から行われるのが通例のようです。
日本学生支援機構が直接行う場合もあれば、機構が業務を委任している債権回収会社から行われるケースもあります。どちらのケースも「日本学生支援機構から」という名指しで連絡されるので、連絡を受ける場合も無視する場合も注意してください。
督促の連絡を無視し続けると、本人に代わって今度は連帯保証人や保証人への督促へと移ります。この段階で保証人になってくれた親族に迷惑がかかるのは必至なので、実行するのであればある程度の覚悟を持っておきましょう。
保証人への督促は、申込時に選んだ保証先によっても異なります。保証人を親族に依頼する人的保証を選んだ場合は上述した通りです。しかし機関保証を選んだ場合には、以下の手順での督促対応が行われます。
- 一括返還請求:返還期限が来ていない借入分も含め、全額の一括返還請求が行われる(元本・利息、遅延損害金)
- 代位弁済請求:日本学生支援機構から保証機関に対して、未返還分全額の請求が行われる
- 保証機関からの請求:代位弁済によって返済を肩代わりした保証機関から、一括請求が行われる
- 強制執行の実施:保証機関を通じた法的措置(裁判)が行われ、資産や財産の差し押さえられる
参考元:機関保証|日本学生支援機構
どちらの場合も督促後の対応に移るまで、滞納している人や保証人に対して繰り返し督促が行われます。個人によってさまざまですが、「滞納額によっては毎日督促が行われた」という声も見られるほどで、甘い対応を期待するのは禁物です。
職場に直接、督促の連絡が入ることはほぼありません。しかし勤務先が知られてしまっていると、自宅などへの督促を無視し続けた場合に限り、職場にも督促の連絡が入る可能性が考えられます。
踏み倒していることが職場にバレたくない人は、勤務先への連絡登録自体を控えるか、職場に連絡されるまでに対応するようにしてください。
最長5年間にも及ぶ金融ブラック扱い
奨学金の踏み倒しを続けることで被るリスクの一つに、金融ブラックとして扱われてしまう点があります。
いわゆる「ブラックリスト入り」とも呼ばれるこの措置は、クレジットカードやローンなどのサービスを使う人ほど、手痛いリスクといえるでしょう。
現状を考えると、どれだけ現金主義を貫いたとしても社会人である限り、ローンやクレジットカードと疎遠で居続けることは困難です。
定職に就き安定収入さえあれば使えるローンやクレジットカードも、一度金融ブラックとして扱われてしまうと、その利用が一気に難しくなります。
奨学金の返済を滞納し踏み倒すと、最長5年間は金融ブラックとして登録され続け、さまざまな部分で不利益を被るのは避けられません。
金融ブラック扱いになると、主に以下のようなサービスの利用を拒否されたり、すでに利用中のサービスの強制停止などの処分を受けたりします。
- クレジットカードや各種ローンの審査通過が困難に
- 消費者金融など貸金業者からの借り入れができなくなる
- 士業など一部職業への就業が制限される
支払い方法がクレジットカードのみなど、サービスによっては必須ともいえるクレジットカードの利用が著しく制限されます。
例えばカードの新規発行を申し込んだとしましょう。入会時に行われる審査の段階で金融ブラックであることが判明するのは確実で、これにより申し込みはほぼ確実に拒否されます。
消費者金融など、貸金業者からお金を借りるのが難しくなる点も無視できません。無人ATMやコンビニATM、スマホアプリから便利に借りられるキャッシングサービスは、現金が必要なピンチの時ほどありがたいサービスです。
金融ブラックの間は、こういったサービスの利用自体を厳しく制限されるため、何かと不便を感じる機会が多くなるでしょう。
このように、さまざまな部分で不利益を被る金融ブラック扱いは、最長5年間に渡って延々と存在し続けます。
踏み倒しによる金融ブラック扱いは、100%避けられない確定リスクです。どちらのリスクが自分にとって避けるべきか、しっかりと判断した上で行動してください。
裁判による資産・財産の差押処分
度重なる督促を無視し続けると、その後の対応が債権回収会社に全て引き継がれます。この段階から、踏み倒し行為に対する対応がより厳しくなる、と覚悟しなくてはいけません。
債権回収会社とは、未回収の債権(借金)を会社などから買い取り請求を行う、いわば「借金の取り立てに特化した会社」と考えてください。そのため、踏み倒すような利用者の対応にも手慣れている、と考えてください。
実際、あの手この手で返済されない債権の回収を行ってきます。そのうちの一つが、裁判を通じた資産・財産の差押処分です。
資産・財産の差し押さえは、たとえ返済を踏み倒している人であっても、会社が勝手に行うことは法律で認められていません。そのため債権回収会社は資産や財産を差し押さえるべく、裁判所に差し押さえの許可を求める裁判を請求します。
訴えを受けた裁判所は、請求に基づき調査を行った上で最終的な判断を判決として行うのが通常です。
奨学金の踏み倒し問題ではよほど深刻な滞納の理由がない限り、滞納している人の言い分が認められる可能性は限りなくゼロです。したがって裁判に訴えられた段階で、差し押さえを覚悟しておく必要があるでしょう。
差し押さえられる資産・財産は、生活に不可欠な最低限の分を除く大半のものが対象です。毎月の給与やボーナス、さらにはマイホームやマイカーさえも、その対象として扱われます。
差し押さえを免れるのは難しいので、それ相応の覚悟を持って対応してください。
連帯保証人・保証人への督促
奨学金を借りた契約者本人が返済の踏み倒しを実行すると、本人からの回収は困難と判断し、今度は各保証人への督促に切り替わります。こちらも明確なルールは示されていません。
しかし3ヶ月以上の比較的長期の滞納を行った時点で、連帯保証人や保証人に連絡がいくといわれています(これよりも早い段階で行われるケースもあります)。
保証人に課せられる返済義務は、連帯保証人と通常の保証人で以下のように違うことを確認しておいてください。もし保証人として奨学金の契約に名を連ねているのであれば、必ずこの点も覚えておきましょう。
- 連帯保証人:未返済額の100%(全額)の返済義務を課せられる
- 保証人:未返済額の50%(半額)を上限に返済義務を課せられる
保証人に対して行われる督促は契約者本人に行われるものと同様、大変厳しいものです。踏み倒しによって、自分だけでなく保証人になってくれた他人にも迷惑をかけてしまいます。
奨学金の場合、2人の保証人はどちらも血縁関係の人が原則なので、親戚関係の悪化は避けられないでしょう。それでも踏み倒すのであれば、事前に保証人に話して了承を得るか、関係悪化を覚悟する必要があります。
奨学金を踏み倒さないためには
ここまで、奨学金を踏み倒す方法やそのリスクについて詳しく解説しました。その内容を知ることで、なかには「やっぱり踏み倒しはやめた方がいい」と、考えを改めた人も決して少なくないはずです。
では、奨学金を踏み倒さないで済む方法は、本当にもうないのでしょうか。そこで今度は考え方を改めて、奨学金を踏み倒さないで済む方法についてチェックしていきましょう。
踏み倒しという選択をする前にこれらの情報を知っておけば、厳しい現状の解決策として活用できるかもしれません。
奨学金の運営元に相談する
奨学金の返済に困ったら踏み倒しという選択に安易に乗るのではなく、まずは一度奨学金の運営元に相談してみましょう。奨学金の返済が困難な人の数は、年々増加の一途をたどっています。
すでに「奨学金破産」など社会問題としても取り上げられるほどで、奨学金の運営元に対する対応を求める声は高まる一方です。その結果、現在では返済が難しい人を対象とした、さまざまな救済制度が導入されています。
日本学生支援機構を例に見ると、この奨学金制度では以下の2つの救済制度が現在導入中です。
- 減額返還:総返済回数を増やすことで、毎月の返済額を減額できる(最長15年まで)
- 返還期限猶予:最大10年を上限に、一時的に返還が猶予される(元本と利息の免除はなし)
どちらも最終的に返済する金額自体は一切減額されません。それでも、返済期間を延ばしたり毎月の返済額を減らしたりすることで、無理なく返済ができるようになります。
少なくても毎月定収入がある人は、こういった救済制度を受けて日々の負担を減らすことで、踏み倒しという選択をせずに済むかもしれません。
減額返還と返還期限猶予は全ての人に適用されるわけではなく、必要と判断される経済状況の人にだけ適用されます。その基準は以下表の通りなので、自分が当てはまっているか参考材料にしてください。
ー | 給与所得者 | 自営業者 |
---|---|---|
減額返還 | 325万円以下 | 225万円以下 |
返還期限猶予 | 300万円以下 | 200万円以下 |
自治体による支援制度を活用する
全国の都道府県や市区町村を中心に、奨学金の返済が困難な人を救済する支援制度が続々と誕生しています。これらの制度を利用するのも、踏み倒しを回避する一つの手です。
いち早く支援を実施している山形県の制度「やまがた就職促進奨学金返還支援事業」を例に見てみましょう。この制度では、県内の高校など学校出身者を対象に、奨学金の返還助成を行っています。
適用条件を満たせば毎月最大2万6,000円の支援を受けられるため、利用できれば滞納も十分回避できるでしょう(支援上限:学生124万8,000円、社会人60万円まで)。
こういった自治体独自の支援制度は、全ての自治体で必ず行われているわけではありません。それでも、今お住まいの地域や学生時代を過ごした地域でこういった支援制度が行われているなら、利用しない手はありません。
制度が実施されているかは各自治体の公式サイトで確認可能です。気になる人は、一度チェックしてみることをおすすめします。制度の適用には、対象の自治体内で就業・定住しているなど一定条件を満たす必要があります。
条件さえクリアできれば毎月の返済の負担を大きく減らせるので、踏み倒しも避けられるでしょう。
連帯保証人・保証人に相談する
契約者からの徴収が無理と判断された段階で、今度は保証人に請求がいくことは、ここまでにも解説した通りです。
迷惑をかけてしまうのなら、保証人に相談してみるのも一つの手です。「奨学金が返済できず、このままだと保証人に請求がいってしまう」旨を真剣に相談すれば、一緒に解決策を見つけられるかもしれません。
早い段階で返済不能に陥る未来を予想できれば、例えば他から借り入れて返済に充てる方法なども選べます。もしくは、自動車など手持ちの資産を処分して返済に充てる方法もその一つです。
早めに相談しておくことで準備のための余裕が生まれ、何らかの方法が見つかる可能性があるわけです。全く相談せずいきなり保証人に督促がいくと、保証人の側でも準備ができず行き当たりばったりの対策しかとれなくなるでしょう。
保証人になってくれた人たちのためにも、なにより自分自身のためにも、勇気を出して一度相談してみることを強くおすすめしておきます。
奨学金の踏み倒しはできるだけ避けるのが無難
法律に違反することなく、抱えている奨学金の返済を踏み倒す方法を紹介してきました。そして、踏み倒しにはさまざまなリスクがあることも否定できない事実です。
そういった要素を全て踏まえた上で導き出される結論は、やはり「踏み倒しはできるだけ避けるのが無難」でしょう。
それが分かっていても、個人の事情によっては踏み倒しという選択を避けられないケースもあります。
すでに奨学金の返済を滞納している人も、これから奨学金を借りる予定の人も、もしも将来滞納する不安が少しでもあるなら、早めの対策が肝心です。
そこでこの項目では、奨学金の返済を踏み倒さざるを得ない人に向けて、事前にできる準備をいくつか紹介します。将来起こり得るかもしれない不安に備えて、ぜひ知識として蓄えてください。
端から踏み倒す覚悟なら、それ相応の事前準備を
奨学金を借りている人の中には、踏み倒しが可能な事実を知った上で、端からその覚悟の下で利用している人もいるでしょう。
踏み倒すにしても、早い段階である程度の事前準備ができているかどうかで、最終的に背負うリスクの大きさにも違いが出てきます。
例えば個人再生や自己破産といった任意整理を使って、スピーディーに返済地獄から抜け出すのもその方法の一つ。あるいは資産の差し押さえを予測して、手持ちの資産状況を最小限にしておく方法も有効です。
このように、何も準備しないまま踏み倒した場合と比べれば、事前準備しておくだけでもその後のリスクをいくらか減らせます。そしてもう一つ、踏み倒し前提で行っておいた方がいい準備として、必ず機関保証を利用しましょう。
連帯保証人は機関保証を利用すべき
奨学金は将来の回収不能のリスクを減らすべく、契約者に対して保証人の設定を義務づけています。
日本学生支援機構の奨学金を見ると、人的保証と機関保証の2つの選択肢が用意されており、状況に合わせて自由に選択可能です。各保証の特徴は以下の通り。
- 人的保証:父母を連帯保証人に、4親等以内の親族を保証人とする制度。費用は不要
- 機関保証:保証機関に毎月定額を支払うことで親族による保証が不要に。費用が必要
返済の踏み倒しを最初から考えているのであれば、ここは費用が不要の人的保証ではなく、毎月費用が必要ですが機関保証を利用してください。そうすることで万が一滞納した時に、親族に督促が行くことが一切ありません。
保証機関が全額を立て替えた上で以降は、契約者と保証機関との間のやり取りになります。したがって、少なくとも自分の責任の上で全ての行動を決められるわけです。
「踏み倒しを選びたいけれど、親や親戚に迷惑だけは絶対にかけたくない」という人は、追加費用が必要だとしても機関保証を必ず選びましょう。
※記載されている内容は2024年9月現在のものです。