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奨学金の滞納裁判はどうすれば取り下げてもらえる?裁判によるリスクも解説

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借金の一種ともいえる奨学金の返済を滞らせると頻繁な督促を皮切りに、さまざまなリスクを背負う危険性が徐々に高まります

なかでも特に注意したいのが、財産の差し押さえを狙った裁判への裁判です。こうなると、こちら側も法律にのっとった対応が必須で、その手間や費用は決して軽いものではありません。

もし奨学金の滞納裁判を起こされたら、何を差し置いても真っ先に対応窓口に連絡を入れてください。その場で滞納を続けた理由を丁寧に説明し、少しずつでも返済する意思があることが肝心です。そうすることで裁判の取り下げへの道筋が、ほんの少しですが見えてきます。

「ほんの少し」と表現したように、その確率が100パーセントではない点はいうまでもありません。しかし裁判で争うリスクを考えれば、たとえわずかな可能性でも賭けてみる価値は十分にあるでしょう。

この記事では、奨学金の滞納問題が裁判に発展した場合に備え、裁判を取り下げてもらえる確率を上げる方法を紹介します。また裁判になることで被るリスクも紹介するので、滞納がどれだけ危険な行為であるかも再確認してください。

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奨学金の滞納を続けると裁判沙汰に

冒頭でも解説したように、奨学金の返済を滞納し続けると、最終的に裁判沙汰に巻き込まれてしまいます。そのため裁判だけは絶対に避けたいなら、そうなる前に適切な対応を採らなくてはいけません。

といっても、奨学金の返済を1回や2回滞納したからといってすぐに裁判に裁判されるのかというと、現実にはある程度の余裕があります。
奨学金運営元から明確な指標が提示されているわけではありません。しかし滞納開始後6~9ヶ月が経過した段階で裁判手続きに移行する、というのが一般的です(これよりも早い、または遅いケースもあります)。

最終的に裁判手続きが行われるまでに、各段階でさまざまな対応が行われます。これらの内容と順序・タイミングを知っておけば、自分が今どの状況にあるかをある程度自己判断できるわけです

そこで裁判を取り下げる方法をチェックする前に、まずは滞納によって裁判沙汰になるまでに行われる主な対応をご紹介します。

滞納直後は文書や電話による督促が中心

最初の納付期限を超えて奨学金を滞納すると、まずは「指定日までに支払ってください」と督促が始まります。
督促は主に書面(はがき)もしくは電話によるケースが基本です。通常は月に1回「振替不能通知」の名目で書面が送付され、それ以外ではすぐに要件を伝えられる電話による督促が中心になります。

電話が全くつながらなかった場合に、改めて書面送付による督促を繰り返す、と考えてください。電話や書面による督促は、その後に行われるより厳しい督促へ移行するまで、不定期で頻繁に行われるのが通常です。

また、日本学生支援機構の公式サイトでは以下のように記載されていて、自宅だけでなく勤務先への督促があることも示しています。
ただしこの時、事業者名は名乗らず個人名での電話連絡が原則です。そのため、職場で同僚につながったとしてもバレる心配はないので、落ち着いて対応してください

事前に承諾を得ている場合や、自宅・携帯番号の登録がない等、他に連絡を取る方法がない場合には、本人の勤務先に電話をすることがあります。

引用元:督促|日本学生支援機構

平日だけでなく休日も変わらず督促が行われる点も特徴で「今日は日曜日だから、さすがに督促はないだろう」と安易に考えないよう注意してください。
週末でも午前9時から午後9時までの範囲で督促は行われるので、連絡を取りたい人は常にチェックする癖をつけておきましょう

滞納直後から発生する延滞金にも注意

奨学金を滞納すると、借りた現金に相当する元本とそこにかかる利息(第二種奨学金のみ)とは別に、延滞金(延滞利息)も発生します。これは滞納に対する一種のペナルティーで、滞納分の全額に対して割合で発生するのが通例です。

注意しておきたいのが、利息が元々設定されている第二種奨学金だけでなく、無利息の第一種奨学金にも延滞金が発生する点でしょう。
「無利息の奨学金だから延滞金はかからないだろう」と誤解する人が多く、気付いた時には高額を請求されてしまうケースも珍しくありません。

給付奨学金以外の全ての奨学金で延滞金は発生するので、基本情報として覚えておいてください。

延滞金は返還期日の翌日から日割りで発生します。そのため、たとえ滞納1ヶ月目であったとしても、その存在は常に意識しておくべきです。ただし実際に延滞金が徴収されるのは、連続滞納2ヶ月目以降となる点に注意してください

例えば11月27日に初めて滞納したとしても、翌月27日に前回分と合わせて2ヶ月分の元本+利息分を一括返還すれば、延滞金は発生しません。連続して2回以上滞納すると延滞金が課せられる、と覚えておきましょう。

延滞金を算出する利率は、奨学金を借り終わった時期と滞納発生月などから個別に設定されています。具体的な内容は以下表の通りです。

【借入終了時期と滞納発生月ごとの延滞金算出利率】
奨学金の種類 奨学金の借入終了時期 延滞金の利率(日時は滞納発生月)
第一種奨学金 平成10年(1998年)2月
以前
・平成26年3月31日まで:5.0%
・令和2年3月31日まで:2.5%
・令和2年4月1日以降:1.5%
平成10年3月以降 ・平成26年3月27日まで:5.0%
・令和2年3月27日まで:2.5%
・令和2年3月28日以降:1.5%
平成17年4月以降 ・平成26年3月27日まで:10.0%
・令和2年3月27日まで:5.0%
・令和2年3月28日以降:3.0%
第二種奨学金 平成10年2月以前 ・平成26年3月31日まで:10.0%
・令和2年3月31日まで:5.0%
・令和2年4月1日以降:3.0%
平成10年3月以降 ・平成26年3月27日まで:10.0%
・令和2年3月27日まで:5.0%
・令和2年3月28日以降:3.0%

※利率は全て年率

滞納3ヶ月から督促はより厳しく

最初の滞納から3ヶ月間連続で滞納を続けた段階で、それまで行われていた督促はより厳しいものへと移り変わります。連続滞納が3ヶ月を超えた段階で変化する督促の内容は、以下の通りです。

  • 本人だけでなく、連帯保証人や保証人にも督促が行われる
  • 信用情報に滞納している事実(延滞情報)が記録される

まず、それまで契約者本人だけに行われていた督促が、連帯保証人や保証人にまで幅が広がります(人的保証を利用した場合に限る)。
初めは連帯保証人宛てに督促が行われ、それでも対応が見られないと、次に保証人に督促がスタートするのが通常です。

そのため、この段階で滞納問題は自分のみならず、他人にも迷惑をかけてしまうことを覚悟しなくてはいけません。

滞納が連続して3ヶ月間続くと信用情報にその旨が記録され、以降さまざまな部分で不利益を被る点にも注意してください。これはいわゆる「ブラックリスト入り」と呼ばれる状態のことです。

主に以下のような取引上で本来であれば利用できたのが、NGになる確率が跳ね上がります(利用できるケースもあり、100パーセントNGとなるわけではありません)。

【ブラックリストになるリスク一覧】

  • 各種ローン(自動車、住宅など)の新規契約が組みにくくなる
  • クレジットカードの新規発行が難しくなる
  • すでに所有しているクレジットカードが強制停止(解約)される可能性がある
  • 10万円を超える本体価格の携帯電話(スマートフォン)の分割購入ができなくなる
  • 賃貸契約を結ぶ際に保証会社が利用できなくなる
  • 連帯保証人、保証人になれなくなる

ここでいう「連続した3ヶ月間」の滞納とは、合計で4回分の返済を連続滞納した状況のことを指します。
例えば3回分の滞納だと連続月間は2ヶ月となるため、この場合は「信用情報の記録」というペナルティーには該当しません。「連続滞納3ヶ月間=3回分」ではなく「4回分の連続した返済期間」となる点も、覚えておきましょう。

裁判所への裁判は滞納開始6~9ヶ月後

連続した滞納が半年を過ぎた段階で、状況はより深刻な状態とならざるを得ません。この段階を迎えると、それまで督促を行っていた奨学金の運営元組織から、債権回収会社(サービサー)と呼ばれる専門業者に全ての対応が委託されます。

債権回収会社とは、滞納などによって回収困難な債権を買い取り回収する業務を専門的に行う会社で、いわばプロの回収業者と考えてください。日本学生支援機構が債権を委託するのは、以下のような会社がその一例です。

【日本学生支援機構が委託する債権回収会社の例】

  • 日立キャピタル債権回収株式会社
  • エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
  • アルファ債権回収株式会社

これらの会社名ではがきや電話連絡が届いたら、債権回収会社に委託された、と判断してください。また、それまでに行われていた督促と比べると、その内容や回数は段違いに深刻なものです。

平日や休日を問わずしきりに連絡が入るので、ストレスに感じる人も多いでしょう。はがきも債権回収会社の社名が明記されて届きます。それが原因となり、滞納していることが同居の家族にバレる可能性も高まる点に注意してください。

この段階を迎えたことで、状況はとても厳しい段階に差し迫っているといえます。以降は裁判などの法的手続きに移行するため、問題をこれ以上大きくしたくなければ、すぐにでも督促連絡に対応しましょう

また連続滞納を続けてから8ヶ月が経過した段階で、それまで分割返済だった請求が一括返済に切り替わります。これは「期限の利益の喪失」という、民法によってそれまで認められた消費者側の権利がなくなったことによる対応です。

こうなると、元本+利息+延滞金の全額一括返済しか認められなくなり、ただでさえ返済困難な状況がさらに悪化するのは必至でしょう。

資産・財産の差し押さえは確定事項

度重なる督促・催告に対応せず放置すると、期限の利益の喪失を盾に、今度は滞納金の全額一括返還請求が行われます。

それさえも無視すると、最終的に裁判を使った法的手続きに移行。こうなると、残されたどの手を使うとしてもこちら側も弁護士を代理人に立てて対応するしかありません。もしくは判決を大人しく待って、それに従うしかないでしょう。

特別な理由がない限り、個人的理由による奨学金の滞納が裁判で認められる可能性は限りなくゼロです。そのため、裁判になった段階で相手側の要求がほぼ全面的に通る、と考えてください。

奨学金の滞納問題の場合は、法的手続きで初めに行われるのは「支払督促の申し立て」が通例です。これは、債権者(貸主)が簡易裁判所に一括返還の請求を申し立てる手続きで、裁判の前準備として行われます。

その後、簡易裁判所から債務者(借主)へ支払督促の書面が送付されるので、こちらの希望(例:異議申し立て、和解など)を記入して返送する仕組みです。その後、債務者の希望に応じた裁判手続きが行われます。

滞納問題で法的手続きとなると、最終目的が資産・財産の差し押さえなのは確定事項です。
というのも、たとえ返済が滞っていたとしても、会社側の判断で一方的に財産を差し押さえることはできません。あくまでも裁判による法的判断で認められて初めて、差し押さえは認められます

債権を持っている会社側がわざわざ法的手続きをするのには、こういった理由があるわけです。ただし、法的手続きに移行してしまったからといって、差し押さえの未来しかないわけではありません。

上記したように裁判所からの書面に対して以下の対応を行うことで、差し押さえを免れる可能性は残されます。ただしこの対応は督促を受けてから2週間以内までに行う必要があり、これを過ぎると強制執行の対象となるので注意してください。

  • 異議申し立て:債権者からの請求を全面的に受け入れない対応。裁判に移行
  • 和解申し立て:分割返納など、返済を前提に債権者との話し合いを希望する。裁判所仲介による和解手続きに移行

すでに裁判所からの通知を受けた人やその直前の状況にある人は、上記どちらかの方法を使って、少しでも状況の改善を狙ってください

差し押さえられる物・されない物一覧

裁判所から差し押さえが認められたとしても、差し押さえられる物とされない物が、法律(民事執行法)によってそれぞれ規定されています。
万が一に備えて、差し押さえられる物とされない物をしっかり確認した上で、万全の対策をしておきましょう

ここで特に注意しておきたいのが、毎月受け取っている給与もその差し押さえ対象に含まれている点です。給与の差し押さえは支給前の段階で行われるため、会社に直接差し押さえ手続きが行われます。

つまり、差押処分を受けた事実が会社に確実にバレてしまうため、場合によってはとても厳しい状況に陥りかねません。裁判によるリスクの一つ、と認識しておいてください。

【奨学金の滞納で差し押さえられる物】

  • 給与、ボーナス(全体の4分の1または33万円を超える分)
  • 預貯金
  • 現金(差押禁止額66万円を超えた部分の全額)
  • 不動産(持ち家に限る)
  • 自動車(職業や日常生活で必要がないものに限る)
  • 各種保険の保険金や返戻金

【奨学金の滞納で差し押さえられない物】

  • 生活必需品(家財道具、衣類、仏壇、実印など)
  • 仕事に最低限必要な道具類(機材、営業用自動車など)
  • 賃貸契約中の自宅
  • 1ヶ月の生活に最低限必要な分の現金や食料、燃料など(現金は66万円以下まで)
  • 学業に必要な物(教科書類、ランドセル、文房具など)

奨学金の滞納裁判、取り下げは期待できる?

奨学金の滞納問題によって、最終的に裁判沙汰になってしまうことは避けられません。では、一度裁判された裁判を取り下げてもらうことはできるのでしょうか?

大前提として、差し押さえを求める裁判は民事裁判であり、原告の判断で裁判の継続・中止を決定できます。とはいっても相手側の意思に委ねる以上、100パーセント可能とは断言できません。

しかし、原告である債権者の意向を改善できれば、裁判自体を取り下げてもらうことは十分に狙えます。そうしてもらうためには、相手が納得できる相応の対応が不可欠です。

返還する意思が認められれば取り下げの期待あり

裁判を取り下げてもらえる可能性が最も高い方法は、滞納している全額を返還する強い意思を示すことです
裁判沙汰になった大本の原因である奨学金の滞納状態を解消できるなら、債権者側も裁判にこだわり続ける理由はありません。返済対応を全くしない悪質な債務者に対して、強制的に返済させるために裁判を行うからです。

しかし、ただ単に言葉だけで「必ず返還します」と言っても、目に見えた効果は期待できないでしょう。というのも、裁判沙汰になるまで自らの問題を放置し続けた債務者に対して、債権者は決して甘くないからです。

「必ず返済する・できる」という確たる証拠を相手側に示せない限り、説得による取り下げはほぼ不可能と言わざるを得ません。
逆に「この人なら、必ず最後まで責任を持って返還してくれるだろう」と相手を説得できれば、取り下げの期待は十分に見込めます。

裁判の取り下げを狙うポイント

具体的にどういった方法を示せば、相手を説得して裁判を取り下げてもらえるのでしょうか。

必ずやっておくべき大前提となるのが、必ず返済する旨を記載した書面を相手側に提出することです。
必要事項を記入して署名・押印した書面は、法的にも効力を持った文書です。そのため、返済する意思や毎月の返済額、返済期限などを書面上で明記して提出すれば、返済可能と判断される可能性が見込めます

取り下げの要求を行う段階で、まとまったお金を一括で返還するのも有効です。
例えば自動車や不動産を所有している人なら、それを売却したお金全額を一括で返済するだけでも、相手の心象を良くできます。こういった方法を合わせ技で実践できれば「返済の意思がある人」と見なされ、裁判取り下げのチャンスも狙えるでしょう。

これらを踏まえた上で、次に紹介する2つのポイントを実践してください。そうすれば、取り下げのさらなる確率アップも夢ではありません。

できるだけ早い段階で自発的に連絡する

滞納が原因で裁判に裁判されると裁判所からその旨を記した書面が届くのは、ここまでに先述した通りです。
書面には、裁判の内容をはじめ必要事項が記載されています。なかでも特に注意しておきたいのが、この時点で裁判の開始までに裁判日から2週間の猶予しかない、という点です。

そのため、裁判前の取り下げを狙うのであれば、とにかく素早い対応が不可欠といえます。
そこでぜひおすすめしたいのが、書面を受け取った段階で裁判した原告側へ、できるだけすぐに連絡を入れること。こうすることで、うまくいけば裁判の開始前に裁判の取り下げを狙えます

この時、相手側に対して「確実に全額を返済する」という意思をとにかく強く示すことがポイントです。連絡しても曖昧な回答だけだと「返済の見込みなし」と判断されてしまい、取り下げのチャンスは永遠になくなってしまいます。

この方法のポイントは「できるだけすぐに自発的に連絡すること」と「返済意思を明確に提示すること」です。
裁判後とはいえ原告側も、自発的に連絡を入れ返済を希望する人に対して、時間のかかる裁判を継続してまで取り立てようとはしないでしょう。

この方法を実践したからといって、確実な結果が期待できるわけではありません。それでも、何も行動しないよりは圧倒的にチャンスがあるので、勇気を出して連絡してください

返済できなかった正当な理由を証明する

裁判取り下げの確率を少しでもアップするもう1つのポイントが、返済できなかった正当な理由を相手に知ってもらうことです

滞納している人の中には、返済できないことに対する恥ずかしさや後ろめたさから、返済できない理由を明確にしないままの人も少なくありません。
しかしお金を貸主としては、返済を滞納したことに対して「なぜそういった行動を選んだのか?」と、理由を知りたくなるのも当然でしょう。
個人同士の貸し借りなら尋ねやすい理由も、個人と組織間の貸し借りでは、理由を明確にしづらい問題があります。

なぜ、返済できなかった理由を伝えることで取り下げのチャンスが生まれるのか?
というのも、その理由によっては「やむを得ない事情があった」と判断され、仮に早い段階で相談していれば、奨学金制度の救済措置を受けられた可能性があったからです。

奨学金制度は年々返済不能者が増加していて、そのことはすでに社会問題として広く知られています。そのため各奨学金の運営組織ではこの問題に対応すべく、返済が困難な利用者に対するさまざまな救済制度を導入しました

裁判まで状況が進んでしまった人のなかには、早い段階で相談しておけば救済制度を受けられた人も決して少なくありません。
現在の奨学金制度のこういった事情を考えると、やむを得ない理由による滞納であれば誠実に行動することで、厳しい状況は回避できるかもしれません。

「確かに借りたけれど、返すのがもったいなかった」など、自分勝手な理由は論外です。しかし「返済したい強い意思はあったけれど、収入が少なく返せなかった」という正当な理由を伝えられれば、相手の心象を少しは良くできます。

その結果、場合によっては当事者間での交渉となり、裁判取り下げのチャンスも生まれるでしょう

連絡を入れておくことで裁判結果を有利にできる可能性も

裁判直前まで状況が進んでしまい慌ててすぐに連絡しても、返せなかった理由を説明しても、それでも裁判を回避できないケースはあります。しかし、たとえ裁判を回避できなかったとしても、裁判前に行ったこれらの行為は決して無駄ではありません。

こういった行動を、結果がすぐ伴わないとはいえ行っておくことで、その後の裁判の結果を有利にできる可能性があります。逆にこういった行動をせず裁判に挑むと、大半のケースで財産の差押処分という、最も厳しい結末を迎えるでしょう。

なぜ、前もって行いながら裁判を取り下げられなかったこれらの行動が、裁判結果を有利にできるのか?それは、日本の民事裁判で導入されている「和解」という制度に理由があります。

和解による問題解決を狙うのも有効

奨学金の滞納問題による裁判では、両者の意見がかみ合わず、裁判官が最終判断を下す判決とは別に「和解」という方法もあります。和解とはその名の通り、原告と被告の双方が1つの結論を了承し、問題を解決する方法のことです。

和解に至ったケースを判決のケースと比較すると、被告側に厳しくない結論となっている判例が全体的に多く見られます。つまり、判決よりも和解で済ませた方が、結果的に借主にとって軽い負担で済むわけです

和解の成立には「原告(貸主)と被告(借主)の双方が合意すること」が絶対条件となります。このため、貸主である原告側が和解を拒否し続ける限り、裁判官から和解を提案されたとしても成立しません。
逆に和解を認めてもらえればその場で成立となり、裁判は判決とならずそのまま終了します。

一度裁判がスタートしてしまうと、裁判自体の取り下げ確率の大幅な減少は避けられません。これが和解という方法であれば、裁判中であっても成立する確率が十分に残されています。

ここで生きてくるのが、前の項目で述べた「すぐに連絡する」と「返せなかった理由を説明する」という、貸主に対する2つの行動です。これを事前にしておいたかどうかで、和解が成立する可能性は大きく違ってきます

「裁判の取り下げ」という下心が前提とはいえ、自発的に連絡し事情を説明する行動に相手の心象を善くする効果があるのは、すでに解説した通りです。
それに貸主としては、貸したお金さえ満額で返してもらえるなら、裁判を無理に続ける必要はありません。

奨学金裁判での和解案では、毎月の返済額を少なくしその分返済回数を増やす、返済総額が減らない方法の提案が一般的です。
貸主から見れば返済総額は減らないので、損はありません。借主も、返済期間こそ延びますが毎月の負担はこれまでより減るので、双方にとって無難な決着といえるでしょう

最終的に資産を差し押さえられる状況を考えれば、無理に争うよりも和解を狙って問題解決を図る方が無難です。

滞納から裁判まで基本的な流れ

滞納を始めてから裁判に裁判されるまでのおおよその期間は、早い場合で6ヶ月目以降です。ただし、一般的には一括請求への切り替えなどの関係で、8~9ヶ月後に裁判されるケースが多く見られます。

もちろんこれよりも早い、もしくは遅いケースもあるので、あくまでも参考として確認してください。ここでは、一度も返済しないまま連続滞納し9ヶ月目に裁判されたケースを例に、裁判までの基本的な流れをチャート化して紹介します。

  1. 滞納1ヶ月目:電話・書面による督促。信用情報への登録に関する警告文書が届く

  2. 滞納2ヶ月目:電話や書面による督促。以降は延滞金が発生。連帯保証人に案内が届く

  3. 滞納3ヶ月目:電話や書面による督促。連帯保証人と保証人に案内が届く

  4. 滞納4~5ヶ月目:債権回収会社に委託され督促開始。信用情報への延滞情報の登録(ブラックリスト入り)

  5. 滞納6~7ヶ月目:対応しない場合、今後法的手続きを行う旨の案内が届く

  6. 滞納8ヶ月目:「期限の利益の喪失」により一括請求へ切り替わる

  7. 滞納9ヶ月目:簡易裁判所を通じた支払督促の通知→裁判開始

裁判沙汰にしないためには

裁判という現実が迫った時、その問題を避けるべく取り下げてもらえる可能性について、ここまで解説してきました。本来であれば裁判沙汰にしないよう行動しておけば、こういった苦労の必要は全くありません。

しかしなかには「奨学金を返さなくてはいけないことは重々承知しているが、どうしてもお金が用意できない」などやむを得ない状況の人も多いでしょう。そんな人に向けてここでは、裁判沙汰にしないための方法を2つご紹介します

どちらの方法が自分の状況にマッチしているか、その点を確認しつつベストな方法を選んでください。

督促を受ける前に運営元へ相談する

本来返すのが当たり前の返済を滞納する上、督促を無視し続けるのは、たとえどんな理由があったとしても正当な行動ではありません。
払えないからと無視し続けるのではなく、勇気を出して自発的に運営元に相談することで、思わぬ解決法が見つかるケースもあります

同じ立場の人が急増している奨学金の返済問題が注目されるなか、現在では奨学金制度にさまざまな救済措置が導入されるまでになりました。
こういった救済制度は、やむを得ない理由から返済が難しい人であれば、適用される可能性は十分に期待できるものです

最大手である日本学生支援機構(JASSO)を例に見ると、次の3つの制度が救済措置として用意されています。

【日本学生支援機構の奨学金滞納の救済措置】

  • 返還期限猶予:10年を最大に、毎月の返済を先延ばしできる(返済総額は変わらず)
  • 減額返還:返済期間を延長することで毎月の返済額を減らす(返済総額は変わらず)
  • 返還免除:死亡または重度の障害が原因で返済が難しい場合に限り、全額の返済が免除

これらの救済制度は、日本学生支援機構の公式サイトをはじめ、滞納時に送付される督促状にも案内が併記されています。
返済する金額自体は変わりませんが、現状の負担を軽くしたり先延ばししたりが可能です。そのため救済制度を使うことで、以後の対策が練りやすくなるでしょう

全額が免除される返還免除は適用条件が特殊で、採用される人は限定されます。また返還免除の適用によって返済義務がなくなるのは、契約者本人のみです。

人的保証を選んで連帯保証人を親族から選んでいる場合、返済義務がそちらに引き継がれてしまいます。保証人も引き続き返済義務を免れるつもりなら、連帯保証人が改めて免除申請を行う必要があり、対象の人はその点にも注意してください。

救済制度は自動的には適用されない

ただし上述したこれらの救済制度は、運営元に相談の上で自己申請して初めて適用されるものです。制度の対象条件に当てはまっているからといって、滞納中の人に自動的に適用されるわけではありません。

利用したいのであれば、必ず運営元へ自発的に相談・申請してください

返済の見込みが薄ければ債務整理の検討を

運営元に連絡することで得られる救済は、どれも返済自体を免れることはできません。つまり救済を受けたとしても、その後に発生する返済に対応できるだけの収入が必要になります。

奨学金の返済を滞納せざるを得ない人の中には、定職や安定収入がなくなってしまった人も多いはずです。そんな人々にとっての救済は、全く意味のない対応ともいえるでしょう。

そこで、いわば最終手段としてぜひ覚えておいてほしいのが、債務整理という方法。この債務整理とは、返済できない借金問題を、法律(主に民事再生法)に基づき合法的に解決する手段です。

奨学金の滞納問題では以下の3つの方法から、状況に合わせて1つを選びます。

【奨学金の滞納問題で利用できる債務整理】

  • 任意整理:利息の返済を免除(または減額)した上で、元本のみの返済義務を引き続き負う
  • 個人再生:返済総額に応じて借金を一定に減額した上で、返済義務を引き続き負う
  • 自己破産:免責が認められた分の借金の返済義務が免除される

奨学金の滞納問題で、自己破産を中心に債務整理の方法と利用時の注意点・リスクを、別ページで詳しく解説しています。現状の問題を債務整理で解決したい人は、あわせてチェックしてください。

※記載されている内容は2024年9月現在のものです。

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