手続きはお早めに!保険の切り替えの基礎知識
更新日:
公開日:2018.8.31
国民保険と社会保険の切り替え手続きは早めに!
事故などによるケガや病気は、できる限り避けたいものですが、生きている以上どうしてもあります。
そんな時、誰しもが安心して医療を受けられるように、相互扶助の精神にのっとって保険料を出し合うことで、運営されているのが「健康保険」です。
自営業者や年金受給者など、会社などに属していない方が加入する健康保険を国民保険(以下国保)、サラリーマンなど給与を会社から支給されている方が、加入する健康保険を社会保険(以下社保)と呼びます。
そして、職業属性が変わったとき、場合によっては切り替え手続きをしなければならず、遅れると無保険の状態になるケースもあるため、注意が必要です。
そこで今回は健康保険について、主に切り替えの際必要となる基本的な知識について、詳しく解説して参ります。
この記事の目次
【PR】今すぐ10万円を借りたいならココ!
- 20~35歳の方におすすめ
- 36~60代の方におすすめ
国保から社保に切り替える
基本的に、国保から社保への切り替えが必要なケースは、「無職、あるいは自営の状態から、会社員などになった。」場合となってきますが、この時の手続きはどのように進めればよいかについて、ここではお話します。
社保への加入手続きは会社側がしてくれるのでOK
社会保険には、中小企業が採用している「政府管掌健康保険」や、大企業が導入している「組合管掌健康保険」、さらに「船員保険」や「公務員共済保険」など、いくつかの種類に分かれます。
1つずつ解説するとややこしくなるので、今回は社保でひとくくりにしますが、入社した会社が
-
- 強制適用事業所…事業主を含んだ従業員が1人以上の会社、国や地方公共団体などの法人。もしくは、常用従業員が5人以上の一部の個人事業所。
- 任意適用事業所…従業員が5人未満、もしくは5人以上のサービス業や、農林漁業などの個人事業所。
である場合、社会保険への加入が義務化されており、例外はあるものの、ほぼすべての事業所が上記のいずれかに属しています。
加えて、上記適用事業所でありながら、正社員はもちろんのこと、
- 1ヶ月の出勤日数が正社員の3/4以上。
- 1を満たしていなくとも、以下のすべてに当てはまる場合。
- 週の労働時間が20時間以上
- 勤務期間1年以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 学生以外
- 従業員501人以上の企業
上記いずれかの条件を満たしているアルバイト・パートには、社保加入資格が発生するため、加入させていない事業所は法律で罰せられる可能性があります。
ですので、条件に当てはまっていれば黙っていても会社側が社保への加入手続きを進めてくれるので、基本的には安心です。
もちろん、手続き完了の翌月の給与から保険料が天引きされますが、社保の場合保険料も会社と折半ですので、条件に当てはまっているのに加入をしてくれない場合は、きちんと会社に問い合わせましょう。
国保からの脱退は自分で!
一方、就職に伴い国保の方は自分でしっかり脱退手続きをしないと、保険の重複になってしまいます。
手続きを行う場所は、加入時住んでいる市区町村役場の国民健康保険課や、保険年金課の窓口となり、
- マイナンバーカード
- 印鑑(認め印でOK、シャチハタ不可)
- 加入していた国保保険証
- 新たに加入した社保保険証
などが必要となりますが、自治体によって若干変わるため要確認です。
なお、国保からの脱退は「14日以内」が原則とされていますが、罰則があるわけでも期限を過ぎたら受け付けてくれないわけでもないので、「できるだけ早く」手続きをすることを心がければ、特に問題ありません。
また、必要書類の1つである「社保保険証」が手に入るまでには、数週間程度かかる場合がありますし、手続きをする各役所は平日しか稼働しておらず、就職したての時期は仕事中に抜けたり、休みを取ったりするのも気が引けます。
ほとんどの役所が、上記で示した必要書類の写しと国保保険証の原本を郵送することによって手続きを進めてくれますが、各役所ごと方法などが若干異なるため、事前に電話などで確認をしておきましょう。
被保健期間のタイムラグに注意!
少々勘違いしている方も多いので、ここでお伝えしたいのが、国保の適用期間は脱退手続きを完了した日までではなく、社保に加入する会社などに入社をした、「前日まで」になっています。
例えば8月1日に就職し、8月14日にようやく国保脱退手続きができた場合、国保が適用されるのは7月末日までということです。
そして、8月14日までにどうしても病院にかかる必要が出て、もし国保を使ってしまった場合、その際国保でカバーしてもらった全医療費の70%分の返還通知が、市町村役場から後日届いてしまいます。
この場合、一旦返還通知に従って70%分を支払い、その後新たに加入した社保側に返還請求する手続きを取らなくてはいけません。
非常に面倒になりますので、新たに加入した社保を使うことを、忘れないようにしましょう。
前述したとおり、タイミングによっては新しい保険証が、まだ手元にないケースもありますが、その旨をきちんと伝えれば、ほとんどの医療機関が対応してくれます。
国保の保険料はいつまで発生するの?
国保の保険料に日割り制はなく、月初入社した場合でも月の途中で入社をした場合でも前月末までの保険料を支払うことになります。
ただし、月途中入社の場合、新たに加入する社保保険料は1ヶ月分発生し、次月の給与から天引きが始まります。
また、国保の脱退手続きが遅れ、入社翌月になってしまった場合は、保険料の納付書が届いてうっかり納付してしまったり、口座振替を設定している場合、自動的に口座から引き落とされます。
もちろん既に国保は使えなくなっていますし、うっかりミスや忙しさによる二重支払いですので、脱退手続きさえすれば後日指定口座への振込で返還されます。
ただ、先程触れた国保の誤使用による医療費返還と併せ、何かと手間がかかるので脱退手続きをし、早めに保険証を返還しておくといいでしょう。
社保から国保に切り替える
一方、会社を辞めたケースなどでは、社会保険から脱退し国保に加入し直すか、会社に社保の任意継続を申請する必要があります。
任意継続については後程詳しく触れるとして、ここでは社保から国保への切り替え方法について、詳しく手順や注意点を解説します。
国保に入らないとどうなる?
国保への切り替え方法をお伝えする前に、まず国保への加入がなぜ必要なのかについてお話しておきます。
1961年の国民健康法改正により、日本では国民皆保険制度が確立し、その中核を担うのが国保です。
そして、美容整形や人間ドック、先進医療などの一部適用除外を除けば、病院でかかった全医療費の80%もしくは70%を国保が負担してくれます。
仮に、病気やケガで15日間入院したとすると、1日当たりの平均的な入院費用は2万円ほどと言われているため、約30万円を支払う必要がありますが、これはあくまで国保に加入していた場合の自己負担額です。
一方、25歳の方が「病気になんてならないから大丈夫!」とタカをくくって、国保に入っていなかった場合、上記と同じケースで総額約100万円が必要となるのです。
社保から国保への切り替えと「ほぼ真逆」と覚えておこう!
社保からの脱退手続きは加入時同様、所属していた会社が実施するので、特に何もする必要はありませんが、国保への加入は市区町村役場で、自ら手続きをしなければなりません。
切り替え手続きは退職の翌日から可能で、14日以内に完了することが原則とされています。
もちろん、何らかの事情出遅れても受け付けてくれますが、長きにすぎると加入義務の不履行ととられ、最悪の場合10万円以下の罰金を科せられることもあるので、できるだけ早く行いましょう。
必要書類については、下記になります。
- マイナンバーカード
- 印鑑(認め印でOK、シャチハタ不可)
- 社保の資格喪失連絡票(証明書)
なお、資格喪失連絡票は勤務先に申告して、作成してもらう必要がありますが、作成に数日かかるケースもあるため、素早く加入するために事前申告し、入手しておくとよいでしょう。
国保の保険料はどのくらい?住んでいるところで違うって本当?
加入義務があるとはいえ、気になるのはやはり国保の保険料であり、少ない負担額で決してないので、退職前にはある程度資金を蓄えておくなど、なんらかの対処が必要です。
国保保険料は、世帯の前年度年収によって増減する「所得割額」と、加入世帯人数と年齢によって変わる、「均等割額」の2つで構成されてます。
今回は、具体的な保険料を分かりやすくお伝えするため、
家族構成 | 年齢 | 属性 | 収入 |
---|---|---|---|
夫 | 40歳 | 元会社員 | 前年度年収300万円(給与所得192万円) |
妻 | 35歳 | パート | 前年度年収80万円(給与所得15万円) |
子供 | 10歳 | 小学生 | 収入なし |
子供 | 10歳 | 小学生 | 収入なし |
居住自治体・東京都某区 |
※福岡市HPより
上記の表をモデルケースに、シミュレーションしてみましょう。
まず、収入のある方の給与所得から、33万円の基礎控除を引いた額が、「基準額」として保険料算出のポイントとなりますが、このケースの場合、夫の方は159万円の基準額が発生します。
一方、妻の方はマイナスになるため「0円」扱い、結果この世帯の基準額は、「159万円」ということになります。
この基準額をもとに、所得割額が算出されるわけですが、所得割額は以下のように、「医療分・支援分・介護分」の合計で決まります。
- 医療分…159万円×7,32%=116,388円
- 支援分…159万円×2,22%=35,298円
- 介護分…159万円×1,66%=26,394円
- 合計…1+2+3=178,080円
次に、収入によらない均等割額の算出ですが、こちらの場合は先程触れた基準額ゼロの場合でも、保険料の対象として数えられます。
②支援分…3×12,000円=36,000円
③介護分…40~64歳の加入者数分 15,600円
④合計…①+②+③=168,600円
最後に、4と④を足せば、やっとこの世帯の国保保険料である、346,680円をはじき出すことができますが、これは年額であり実際には分割で、保険料を納めることになります。(自治体によって分割回数や、支払い開始月が変わるので要確認)
なお、基準額に掛け合わせている「%」は、保険料率と呼ばれるもので、料率及び均等割額は自治体によって変わるため、全く同じ条件でも保険料に格差が出てくるのです。
ちなみに、全国の自治体で国保保険料が高い所と、安い所を5つずつランキングすると、
保険料が高い | 保険料が安い |
---|---|
1位 兵庫県神戸市 | 1位 静岡県富士市 |
2位 広島県広島市 | 2位 愛知県豊田市 |
3位 北海道函館市 | 3位 神奈川県相模原市 |
4位 大阪府東大阪市 | 4位 愛知県春日井市 |
5位 山形県山形市 | 5位 神奈川県平塚市 |
※年収等の条件で順位は変動する
このようになっており、今回のモデルケースに当てはめると、最も高い神戸市と最も安い富士市とでは、年間約11万円もの差が生じます。
決してバカにならない差額なので、社宅などを利用しているケースで、退職に伴って転居が必要なときは、1つの参考にするのも良いでしょう。
親類の扶養に入るのもあり!?
国保の保険料は、前述したとおり前年度の年収によって算出されるため、退職に伴い収入が無くなったり、アルバイト・パートなどで収入が大きく減った場合、納付が困難になることもあります。
こんな時、親族や配偶者が会社勤めをしていて、社保の被保険者であった場合は、その方の被扶養者になることで国保への加入をしなくて済み、保険料を大きく節約できるケースもあります。
被扶養者となる条件は、元となる被保険者が、
- 直系の親・兄弟姉妹・子供・配偶者(別居でも可)
- 同居している3親等内の親族
であり、上記対象に家計を維持されていることに加え、被扶養者の年収が130万円以下かつ、被保険者の半分以下である必要があります。
ただ、被扶養者になることによって保険料を節約できるのは、被保険者の健康保険が社保であった時で、国保の場合は前年度年収が参考とされるため、それが130万円を超えている場合、そもそも被扶養者になることが不可能です。
また、仮に前年度の年収が130万円以下であっても、国保の保険料は前述したとおり世帯すべての年収を合算して算出されるため、保険料を会社と折半をする社保と異なり、節約につなげることもできません。
任意継続はお得?損?
退職などで社保から抜けたとき、管轄する協会けんぽ支部で、書類提出などの手続きをすれば最長2年間、会社で加入していた社保に継続加入することができ、これを任意継続と呼びます。
ただし会社在籍中は、折半での負担だった保険料が全額負担になるため、多くの場合国保に加入しなおしたほうが、安上がりであることも多くなります。
事実、国保保険料算出時のモデルケースで試算したところ、国保保険料が月換算で約29,000円弱なのに対し、任意継続による社保保険料は、約36,000円と高くなります。
結論として、基本的に任意継続の方が国保への切り替えより、損になるケースが多いと言えます。
医療費補助の返還金や追徴金請求の負担に備えるにはどうする?
退職に伴う社保から国保への切り替えでは、折半から全額負担になることによる保険料の上昇から、特に健康体だと自負する若い世代に、未加入者がいるのも事実です。
しかし、勘違いしている方も少なからずおられますが、国保は医療費をカバーしてくれる心強い制度ながら、権利ではなく国民の義務である「税金」なので、社保から抜け任意継続をしなかった場合は、「強制加入」と考えておきましょう。
加入しなかった場合、単に医療費の補助を受けられないだけでなく、「国保保険料の未払者」とみなされ、ある日突然役所から「追徴金請求通知」が届きます。
未納分の計算は、加入資格の獲得から2年間続くため長期間未納状態が続いた後、やっと加入手続きできたとしても、かなり高額な未納金を治めないと被保険者の権利を得ることができず、当然ながら医療費補助を受けることも不可能です。
また前述したように、国保からの脱退をしないうちに、誤って医療費の補助を受けてしまった場合は返還金を請求されますが、この際もいったん収めてしまわない事には、返ってきません。
いずれの場合でも、大きな資金を工面する必要があるうえ、社保への切り替えはともかく、国保への切り替えでは収入減と保険料負担増が、一気にやってくることになります。
ですので、退職を決めた際には国保への加入などの出費に備え、在職中の時点でカードローンを1枚組んでおくと心強く、おすすめになってきます。
※記載されている内容は2024年9月現在のものです。